頑張れ [書斎の本棚]
ドラマ「僕の生きる道」の二次小説です。
興味のある方だけお進みください。
というか、説明など一切省いているのでドラマ「僕の生きる道」を観ていないと何の事か分からないと思います。
------------------------切り取り----------------------
久しぶりの更新で大変申し訳なく思っております。
日常のことは、もう一つのブログ「四畳半の日記帳」で更新しており、こちらは基本的に「僕生きネタ」のみ。
前のホームページ版からの引っ越しも出来る範囲では完了しているので、これからも更新頻度はゆっくりになるでしょう。
で、2年ぶり以上にパーっと書いてみました。
リハビリだと思ってご容赦ください。
では
頑張れ
「吉田、最初の授業で中村先生の読まなかった本の話をしたのか?」
飲み放題メニューの為、田中守は中ジョッキのビールをあっという間に3杯空にしている。
「吉田君、それで生徒たちはどうしたの?」
仕事を定時に切り上げて、飲み会の前に買い物も済ませた愛華が尋ねた。
「その時は静かに話を聞いていたし、うるさいから僕の授業の時は生物の教科書を出しているけど、多分内職している。岡田先生に聞いたけど他の授業では堂々と参考書を出しているらしいよ」
自嘲気味に吉田均が言った。
理想を掲げて教師になったが、半年経っても自分の思う方には行かない。
均は教師になってから今までのことをみんなに話したのだ。
落ち込み気味の均を守が励ます為に飲もうかということになったのだが、それを聞きつけたのが赤坂栞、それからあっという間に黒木・鈴木・杉田・近藤に伝わった。ゴールデンウィークの同窓会以来、なかなか集まることが出来なかった面々は私も、私も、ということになり、女性5人が参加した。
近藤萌から交際相手の田岡雅人に伝えられたが5年生になった田岡は附属病院での臨床実習が重なり余裕がなかった。
「多分、重みが違うんだよ」
お酒が飲めない杉田めぐみは真顔で言った。
そんなめぐみの言葉に、均はため息を漏らした。
「あ、そういう意味じゃないの。吉田君も先生を立派に務めていると思う。でも、あの時の読まなかった本の話はあの時の中村先生だったから、心に響いたし、心に残っているんだと思う」
めぐみは慎重に言葉を選んだ。
出来あがった鍋をみんなに取り分けていた栞も口をはさむ。
「吉田君、中村先生の言葉覚えていなかったでしょ」
均が栞の方へ顔を向ける。
「あの言葉、みんなに伝えた言葉だったけど、中村先生は特に私に対して言いたかったんだと思うんだ。あの頃、家の事とか色々あって、すごく焦っていて・・・。時間が足りなくて」
栞は目の前のおしぼりを綺麗に畳み直した。
「私には痛烈に残った言葉だったし、多分、めぐみはちゃんと授業を聞いていたから覚えていたと思うけど、他のみんなは殆ど覚えていなかったはずよ」
萌も頷いている。
「中村先生の読まなかった本の話は、後から効いたな」
守がビールを飲むの手を止めて、当時の事を思い出した。
均以外、一足先に社会人になっていた。
それぞれが失敗話をしたり、苦労話をして、均だけが悩んでいるん訳ではないことが分かった。
みんな、気を使ってそういう話にしてくれたのだ。
- やっぱり仲間はいいな -
そう、均は思った。
「あれ、田岡」
鈴木りなが居酒屋の入り口で、どこにいるんだというように周りを見渡していた。
そして、こちらに気が付いた。
「おお、田岡。来てくれたか。良かった良かった」
上機嫌の守が雅人の背中を軽くポンポンと叩く。
「来れるなら連絡くれればいいのに」
萌が言うと、
「何度も電話したけど、お前はちっとも電話に出ないじゃないか」
と雅人が返した。
「え?」
と萌は鞄の中の携帯電話を見る。
数回の電話とメールの着信に全く気が付いていなかった。
めぐみが小皿と箸を雅人に差し出した。
「あ、サンキュー」
雅人をそれを受け取る。
りなが雅人に鍋の残りをさらってあげながら
「どう、臨床?」
「うん、思った以上に大変」
相変わらず、言葉が少ないが目は輝いていた。
今日は落ち込んでいた均を皆で励ますということは雅人も聞いていた。
その理由は聞いていない。
雅人のビールが運ばれてきた。
改めて、
「カンパーイ」
均から一番離れた位置に座っていた雅人は大きく手を伸ばして均のジョッキに合わせた。
「おい!」
均は雅人を見る。
「頑張れよ」
「今でも十分に頑張っている人に頑張ってなんて言うの?」
萌が軽く雅人の腕を引っ張る。
「応援するのに、他に言葉が見つからないよ」
そう言うと、もう一度均を見て
「俺も頑張る。だから、お前も頑張れ」
雅人は優しく笑った。
「私も頑張る。歌手になる!」
「私も頑張る」
「俺も」
「私も頑張る」
「私も」
みんな力強く言った。
「よし、俺も頑張る」
均が立ち上がった。
読まなかった本は確実に新しいページを開いている。
「頑張れ」という言葉、最近相手にプレッシャーを与えるということもあり、控えるケースが多くなっている。けど、他にいい言葉がなかなか無いんですよ。 私は応援するのに「頑張れ」という言葉は素敵だと思うんです。だから、よく使います。
興味のある方だけお進みください。
というか、説明など一切省いているのでドラマ「僕の生きる道」を観ていないと何の事か分からないと思います。
------------------------切り取り----------------------
久しぶりの更新で大変申し訳なく思っております。
日常のことは、もう一つのブログ「四畳半の日記帳」で更新しており、こちらは基本的に「僕生きネタ」のみ。
前のホームページ版からの引っ越しも出来る範囲では完了しているので、これからも更新頻度はゆっくりになるでしょう。
で、2年ぶり以上にパーっと書いてみました。
リハビリだと思ってご容赦ください。
では
頑張れ
「吉田、最初の授業で中村先生の読まなかった本の話をしたのか?」
飲み放題メニューの為、田中守は中ジョッキのビールをあっという間に3杯空にしている。
「吉田君、それで生徒たちはどうしたの?」
仕事を定時に切り上げて、飲み会の前に買い物も済ませた愛華が尋ねた。
「その時は静かに話を聞いていたし、うるさいから僕の授業の時は生物の教科書を出しているけど、多分内職している。岡田先生に聞いたけど他の授業では堂々と参考書を出しているらしいよ」
自嘲気味に吉田均が言った。
理想を掲げて教師になったが、半年経っても自分の思う方には行かない。
均は教師になってから今までのことをみんなに話したのだ。
落ち込み気味の均を守が励ます為に飲もうかということになったのだが、それを聞きつけたのが赤坂栞、それからあっという間に黒木・鈴木・杉田・近藤に伝わった。ゴールデンウィークの同窓会以来、なかなか集まることが出来なかった面々は私も、私も、ということになり、女性5人が参加した。
近藤萌から交際相手の田岡雅人に伝えられたが5年生になった田岡は附属病院での臨床実習が重なり余裕がなかった。
「多分、重みが違うんだよ」
お酒が飲めない杉田めぐみは真顔で言った。
そんなめぐみの言葉に、均はため息を漏らした。
「あ、そういう意味じゃないの。吉田君も先生を立派に務めていると思う。でも、あの時の読まなかった本の話はあの時の中村先生だったから、心に響いたし、心に残っているんだと思う」
めぐみは慎重に言葉を選んだ。
出来あがった鍋をみんなに取り分けていた栞も口をはさむ。
「吉田君、中村先生の言葉覚えていなかったでしょ」
均が栞の方へ顔を向ける。
「あの言葉、みんなに伝えた言葉だったけど、中村先生は特に私に対して言いたかったんだと思うんだ。あの頃、家の事とか色々あって、すごく焦っていて・・・。時間が足りなくて」
栞は目の前のおしぼりを綺麗に畳み直した。
「私には痛烈に残った言葉だったし、多分、めぐみはちゃんと授業を聞いていたから覚えていたと思うけど、他のみんなは殆ど覚えていなかったはずよ」
萌も頷いている。
「中村先生の読まなかった本の話は、後から効いたな」
守がビールを飲むの手を止めて、当時の事を思い出した。
均以外、一足先に社会人になっていた。
それぞれが失敗話をしたり、苦労話をして、均だけが悩んでいるん訳ではないことが分かった。
みんな、気を使ってそういう話にしてくれたのだ。
- やっぱり仲間はいいな -
そう、均は思った。
「あれ、田岡」
鈴木りなが居酒屋の入り口で、どこにいるんだというように周りを見渡していた。
そして、こちらに気が付いた。
「おお、田岡。来てくれたか。良かった良かった」
上機嫌の守が雅人の背中を軽くポンポンと叩く。
「来れるなら連絡くれればいいのに」
萌が言うと、
「何度も電話したけど、お前はちっとも電話に出ないじゃないか」
と雅人が返した。
「え?」
と萌は鞄の中の携帯電話を見る。
数回の電話とメールの着信に全く気が付いていなかった。
めぐみが小皿と箸を雅人に差し出した。
「あ、サンキュー」
雅人をそれを受け取る。
りなが雅人に鍋の残りをさらってあげながら
「どう、臨床?」
「うん、思った以上に大変」
相変わらず、言葉が少ないが目は輝いていた。
今日は落ち込んでいた均を皆で励ますということは雅人も聞いていた。
その理由は聞いていない。
雅人のビールが運ばれてきた。
改めて、
「カンパーイ」
均から一番離れた位置に座っていた雅人は大きく手を伸ばして均のジョッキに合わせた。
「おい!」
均は雅人を見る。
「頑張れよ」
「今でも十分に頑張っている人に頑張ってなんて言うの?」
萌が軽く雅人の腕を引っ張る。
「応援するのに、他に言葉が見つからないよ」
そう言うと、もう一度均を見て
「俺も頑張る。だから、お前も頑張れ」
雅人は優しく笑った。
「私も頑張る。歌手になる!」
「私も頑張る」
「俺も」
「私も頑張る」
「私も」
みんな力強く言った。
「よし、俺も頑張る」
均が立ち上がった。
読まなかった本は確実に新しいページを開いている。
「頑張れ」という言葉、最近相手にプレッシャーを与えるということもあり、控えるケースが多くなっている。けど、他にいい言葉がなかなか無いんですよ。 私は応援するのに「頑張れ」という言葉は素敵だと思うんです。だから、よく使います。
2010-11-28 22:37
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コメント(2)
1:
富士そばの件、そういう事だったんですか。ふむふむ。
スマスマの特番、観たいなぁ。再放送熱望。
2:
maeboo.さん、144編全部、読みました。
これだけの量を生み出した情熱に感心しました。
maeboo.さんにとって『僕の生きる道』がどれ位重要で意味が有るか、垣間見えた気がします。
3:
私が気に入ったのは次の二編:
★武志と香奈の物語
★Our Dream Come True
4:
maeboo.さんの二つのブログは心がこもり、思いに満ち、大変素晴らしい。
『僕の生きる道』のブログでは最高。
by CYPRESS (2010-12-27 22:43)
CYPRESSさん、こんばんは
決して勉強が得意ではありませんでしたが、学科の中でも一番の苦手が国語。
それなのにこんな事を始めたのが7年前。
自分でも何故こんなことをしたのだろうと思いますが、妄想が止まらなかったんです。
ブログ化するにあたり、HPにUPしていた作品を復旧させましたが、一部失われたようです。記憶では170作品位ありました。意図的に現在公開していない作品もあります。
CYPRESSさんのように、光や音、物事が持つ意味合いなど深く考える事は出来なくても、私は勝手に物語を膨らませることがよくあります。そういう見方をしているのでしょう。
気に入って頂いた2作品は長編2作品ですね。
武志と香奈はすらすらと妄想が膨らみましたが、UPしていた頃、私生活でも時間が取れない頃であり、当時はブログではなくHPでしたがとにかく更新作業が大変で、睡眠時間が削られまくりでした。
Our・・・は、難しかったですね。既に短編で書いたストーリーとの辻褄合わせに苦労しました。
スマスマ特番の再放送はまず無いでしょう。
私もVHSテープを探しているのですが見つからない(泣)
このスマスマ特番は「死後、秀雄と佳代子母さんの再会」と「矢田亜希子さんが出演者への同一テーマの質問」で構成されています。最後に草彅くんと矢田さんが同じ質問について語り合い終わり。
物語の続編かと期待していた方にはやや残念という意見もありましたが、あれはあれで私は楽しめました。
綾瀬さんの「富士そば」だけでなく、特番内で飛びだしたエピソードは私の二次小説作品のイメージを湧かせてくれました。
・ドラマ内には登場しなかった、秀雄さんのもう一枚の写真。
・特番内で佳代子母さんが亡くなった秀雄さんと再会出来たのは居眠り
・赤井先生役の菊池さんのお父さんの最後の瞬間、雪の日の話
・岡田先生役の鳥羽さんが、髪を短くし凛々しくなっていたこと
・赤坂さん役の上野なつひさんがファストフードでアルバイトをしたいこと。
・田岡君役の市原君がバイクに乗りたいと言った事。
・麗子先生役の森下さんがブラピに会いたいと言った事。
・田中くん役の藤間君が映画を撮りたいと言った事。
全作読んで頂いたCYPRESSさんならピンとくる作品もあるかと思います。
今一度、再放送まず無いでしょう。ドラマではありませんから。
四畳半の日記帳にこの番組の事はカテゴリに入れてあります。
http://syosaiyojohan.blog.so-net.ne.jp/archive/c15378580-1
by maeboo. (2010-12-27 23:16)