1年の長さ [書斎の本棚]
久しぶりに更新します。
いつも言い訳になりますが、日常の事はメインブログ「四畳半の日記帳」に綴っていますのでご理解たわまりたく思っております。
さて、ドラマ「僕の生きる道」も放映から10年が経過し、メインブログの方でも昔を懐かしみながら色々と思い出しております。
思い出すといえば・・・・・あ、最近書いてないなぁ(笑)
という事で中村秀雄さんが命を落としかけた崖の傍に行ってきたこともあり、その頃の中村先生を短いですが書きます。
殆ど、ドラマをなぞっているだけなんですけどね。
敬明会病院のベンチでの会話。
28年と1年の対比。
うん、やっぱり私にとっては大切なドラマだな。
では、ドラマを知らないと全くわけのわからない二次小説が待っています。
興味のない方は、この先に進まず、どうぞメインブログ「四畳半の日記帳」で私が撮った写真でも見ていただけたら幸いです。
それでは
背面にある窓から、柔らかく明るい月明かりが射し込んでいる。
月の明かりがこんなに明るいなんて初めて知った。
手元にはみどり先生が持ってきてくれた本がある。
色々と決心したのだから、読んでしまおうと思ったのだがこれからすべき事を考えていたら、1ページも開けないままだった。
売店に行った帰り、赤ちゃんを抱きかかえて退院してく母親を見た。
そのまま新生児室へ行き、新しい命をガラス越しに眺めた。
先日、金田医師が教えてくれた、1ヶ月先の娘さんの結婚式の日までは生きたいと願いながら亡くなった患者さんの話を思い出した。
母の声が聞きたくなった。
引き出しから小銭入れを取り出し、病室を出た。
面会時間を過ぎた病院の廊下は必要最小限しか灯りが点いていなかった。
ロビーの端にある公衆電話に10円玉を4枚入れた。
子供の頃から覚えている電話番号をプッシュした。
佳代子と話をしているうちに、何かが弾けた。
病室で、みどり先生が持ってきてくれた本が目に入った。
ずっと読まなかった本。
今となっては本の中身は全く役に立たない内容だと知っている。
だがそれを持って廊下へと出た。
月の明かりが自分の進むべき道に導いてくれていると感じたとき、金田先生がやってきた。
同じベンチに座り、持っている本の事も聞いてきた。
ありのままに答える。
金田先生は持っている缶コーヒーを飲み始めた。
秀雄は金田に質問をした。
前にも捉え方によっては似た質問をした。
「1年って結構長いですよね」
自分の病気を知り、怯え、それから逃れたい為に安楽死を要求した。
あの時、金田はその問いに答えなかった。
だが、今回は
「1年って、28年よりも長いですよね」
と、問うと
「そうだよ」
と、すぐに答えてくれた。
金田とは一度も目を合わせなかったが、秀雄の気持ちが伝わったようだ。
「先生、お願いがあります」
「なんだい?」
「退院させてください」
金田はやっとこっちを向いた。
金田は穏やかな目をしながら、
「中村さん、検査をもう一度やるから明後日まではここにいよう。学校へは月曜日からにしないか?」
「はい」
秀雄は目を輝かせて頷いた。
退院の手続きをしながら、学校に電話を入れる。
教頭先生に月曜日から出勤すると伝える。
先生方は自殺ではなく、事故だと思っているので喜んでくれた。
自宅のアパートでこれからの事を考える。
佳代子から自分が生まれた時に、
『やっと会えたねって、それから、この子の為なら自分の命は捨てられる』
と思ったことを聞いた。
敬明会病院で赤子を抱えた母親もそう思っていたのだろう。
自分は結婚もしていないし、子供もいない。
だが、生徒がいる。若く、迷いがちな生徒たちがいる。
いつもより早く起きて、学校へ行く準備をする。
鞄を開けて、『読まなかった本』を入れ忘れていないか、もう一度確認する。
大きく頷いて、家の扉を開けた。
いつも言い訳になりますが、日常の事はメインブログ「四畳半の日記帳」に綴っていますのでご理解たわまりたく思っております。
さて、ドラマ「僕の生きる道」も放映から10年が経過し、メインブログの方でも昔を懐かしみながら色々と思い出しております。
思い出すといえば・・・・・あ、最近書いてないなぁ(笑)
という事で中村秀雄さんが命を落としかけた崖の傍に行ってきたこともあり、その頃の中村先生を短いですが書きます。
殆ど、ドラマをなぞっているだけなんですけどね。
敬明会病院のベンチでの会話。
28年と1年の対比。
うん、やっぱり私にとっては大切なドラマだな。
では、ドラマを知らないと全くわけのわからない二次小説が待っています。
興味のない方は、この先に進まず、どうぞメインブログ「四畳半の日記帳」で私が撮った写真でも見ていただけたら幸いです。
それでは
背面にある窓から、柔らかく明るい月明かりが射し込んでいる。
月の明かりがこんなに明るいなんて初めて知った。
手元にはみどり先生が持ってきてくれた本がある。
色々と決心したのだから、読んでしまおうと思ったのだがこれからすべき事を考えていたら、1ページも開けないままだった。
売店に行った帰り、赤ちゃんを抱きかかえて退院してく母親を見た。
そのまま新生児室へ行き、新しい命をガラス越しに眺めた。
先日、金田医師が教えてくれた、1ヶ月先の娘さんの結婚式の日までは生きたいと願いながら亡くなった患者さんの話を思い出した。
母の声が聞きたくなった。
引き出しから小銭入れを取り出し、病室を出た。
面会時間を過ぎた病院の廊下は必要最小限しか灯りが点いていなかった。
ロビーの端にある公衆電話に10円玉を4枚入れた。
子供の頃から覚えている電話番号をプッシュした。
佳代子と話をしているうちに、何かが弾けた。
病室で、みどり先生が持ってきてくれた本が目に入った。
ずっと読まなかった本。
今となっては本の中身は全く役に立たない内容だと知っている。
だがそれを持って廊下へと出た。
月の明かりが自分の進むべき道に導いてくれていると感じたとき、金田先生がやってきた。
同じベンチに座り、持っている本の事も聞いてきた。
ありのままに答える。
金田先生は持っている缶コーヒーを飲み始めた。
秀雄は金田に質問をした。
前にも捉え方によっては似た質問をした。
「1年って結構長いですよね」
自分の病気を知り、怯え、それから逃れたい為に安楽死を要求した。
あの時、金田はその問いに答えなかった。
だが、今回は
「1年って、28年よりも長いですよね」
と、問うと
「そうだよ」
と、すぐに答えてくれた。
金田とは一度も目を合わせなかったが、秀雄の気持ちが伝わったようだ。
「先生、お願いがあります」
「なんだい?」
「退院させてください」
金田はやっとこっちを向いた。
金田は穏やかな目をしながら、
「中村さん、検査をもう一度やるから明後日まではここにいよう。学校へは月曜日からにしないか?」
「はい」
秀雄は目を輝かせて頷いた。
退院の手続きをしながら、学校に電話を入れる。
教頭先生に月曜日から出勤すると伝える。
先生方は自殺ではなく、事故だと思っているので喜んでくれた。
自宅のアパートでこれからの事を考える。
佳代子から自分が生まれた時に、
『やっと会えたねって、それから、この子の為なら自分の命は捨てられる』
と思ったことを聞いた。
敬明会病院で赤子を抱えた母親もそう思っていたのだろう。
自分は結婚もしていないし、子供もいない。
だが、生徒がいる。若く、迷いがちな生徒たちがいる。
いつもより早く起きて、学校へ行く準備をする。
鞄を開けて、『読まなかった本』を入れ忘れていないか、もう一度確認する。
大きく頷いて、家の扉を開けた。
2013-02-24 19:45
nice!(0)
コメント(0)
コメント 0