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歌 [書斎の本棚]

メインブログの四畳半の日記帳の更新は頻繁にやっておりますが・・・

こちらの更新は随分とご無沙汰となっていました。

ドラマ「僕の生きる道」放映から10年目を迎えたこの年。

あのドラマの続きを妄想してからも10年が経った訳ですね。

久しぶりに二次小説を書きました。

急に思い立つ理由もありますが、ドラマ「僕の生きる道」を観ていないとこの先全く理解できないと思います。

また、素人オヤジが書く文章。まともなはずがありません。

余程興味がある方だけこの先お進みください。


「歌」控え室の中にいても、出演者やスタッフが話す声や走る音が聞こえてくる。
ここ数日、色々と覚えることが多すぎた。
不安で、不安で、不安で仕方がない。

鏡の中の自分を見つめてみる。
せっかくの晴れ舞台なのに笑い方がぎこちない。
また不安が押し寄せてくる。

♪♪♪

手元にあったスマートホンがメールの着信を伝える。

杉田めぐみは受信ボックスを開いた。
気がつかなかったが、沢山のメールが届いていた。
家族や高校時代のクラスメイト達からだった。

どうやら、みんなNHKホールでの観覧を応募したらしいが誰ひとり当たる事はなかったらしい。テレビで観るよと言ってくれている。
自分が緊張しているのはみんなにはバレバレのようで、冗談を言ってくれたり励ましてくれたり。
少し緊張が解れたかな?

高校を卒業して10年。気がつけばあの頃の中村先生と同じくらいの年齢になっていた。
自分の夢だけだったら諦めていたかもしれない。
中村先生の期待と夢を託されたから歌手になる事を諦めなかった。

高校卒業から5年。
念願のCDデビューを果たした。
十数曲収録された中の一曲だったが、自分の歌がCDとなって店頭に並んだ。
さらに5年。
大晦日の紅白歌合戦に初出場する事となった。

12月上旬に出場が決まると、ハイペースな流れに気持ちが追いついていかなかった。
気持ちを整理したいのにメディアの取材や衣装合わせ、リハーサルが続いて気がつけば当日となっていた。
子供の頃から知っている歌手も大勢いる。その中に自分も一緒に出演するなんて今でも信じられない。

めぐみは狭い控え室でその時を待っていた。

オープニングで一度ステージに立った。
視聴率が下がっている事は聞いているけど、いざステージに立てば多くの観客の視線が注がれる。
やはり紅白歌合戦というのは歌手にとっては大きな舞台なんだろう。
ステージ上には今日出演する殆どの歌手が並んでいるので私を見つけるのも大変だろう。
一旦ステージから捌けて、自分の出番を待っていた。

コンコン
ドアがノックされる。
返事をする前にマネージャーが中に入ってきた。

「めぐみ、行くわよ」
「ハイ」

自分の出番の前、司会者とゲスト審査員の会話が続く。
マネージャーからスタッフに受け継がれてめぐみはステージ中央に立っていた。

テレビカメラはまだ自分を映していない。
だけど、観客の多くは私の事を見ていた。
オープニングと違い、ステージには私しかいない。

これまでに多くの歌番組もライブも出演してきた。
だけど、なぜか今日は緊張しっぱなしだった。
これで中村先生に胸を張って「紅白で歌えたよ」と報告出来ると思っていた。
泣きそうになる。
涙が出そうになる。
これまで辛かった。
先生の夢でもあったけど、歌手になる夢はやっぱり自分の夢でもあった。
嬉しくて嬉しくて。
多分このままでは涙でくしゃくしゃになり、声も出ないかもしれない。
もうそろそろ、司会者による審査員との話も終わりそうだ。
歌えるのか?歌えないかも。
どうしよう・・・・。

観客の多くがめぐみの様子が変なことに気がついていた。

めぐみは客席から注がれる視線を痛いくらい感じていた。
その中に、他のそれとは異質な視線を感じていた。

ギリギリ溢れない涙を手の甲で拭い、視線を感じる方を凝視した。

「みどり先生」

客席の中くらいに中村みどりが座っていた。
満員の会場の中でみどりの横の席が空いていた。

みどりはやさしくめぐみを見ていた。
そして・・・

めぐみは10年前の光景を思い出していた。
あの合唱コンクール。
中村先生から指揮棒を託された吉田均が緊張で動けなくなった。
その時、病院から中村先生とみどり先生が駆けつけてくれたこと。
中村先生が客席で旅立っていったあの日の事を。

みどり先生の横の席はもう空席ではなかった。
めぐみには見えていた。
何かが弾けた。

今年の大河ドラマに主演した女優さんが司会を務めている。
彼女がめぐみの紹介を始めた。


「先生。歌うよ。」
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コメント 2

CYPRESS

おや、おや、へへぇ~(^.^)。
こりゃ『僕の生きる道』を観てないと面白さ、半減以下(^.^)。

ちょっといい話ですね。

2013年12月31日は調べものとようやくBDが出た張藝謀の『秋菊の物語』を観てたんで、紅白歌合戦はパス。

それでも分かるこの短編の良さ。

今年もよろしく<m(__)m>。
by CYPRESS (2014-01-01 17:20) 

maeboo.

CYPRESSさん、こんばんは
相変わらず鼻が効きますね。こそっと更新したつもりのなに。
あ、RSSを使っているのかな。

駄作達全般に言えますが、「僕の生きる道」を観ていないとわからないことばかりだと思います。
あの作品が初めての連ドラ出演だった綾瀬はるかさんも、すっかり国民的女優さん。
そして歌手・綾瀬はるかの作品としては2作品目の「交差点days」がお気に入り。
昨日の紅白は綾瀬さんが歌うところだけ観ました。
ネット上ではポンコツ司会者ぶりが話題になっているようですが、10年間彼女をみていたので、彼女らしくていいなと思います。
それがダメなら、分かって登用した制作を非難すべき(笑)
by maeboo. (2014-01-01 21:44) 

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